- 舌トレーニングはいびきに効果ある?
- 舌トレーニングがいびきに効果ないときはどう対処する?
このような疑問をお持ちの方も少なくないでしょう。
いびきは気道狭窄によって引き起こされるため、気道狭窄の原因が舌にある場合、舌をトレーニングすることで舌根沈下や舌の位置異常の改善が得られ、いびきの改善が期待できます。
一方で、舌以外の原因でいびきが生じている場合は、舌トレーニングを行なってもいびきが改善されない可能性があるため、注意が必要です。
この記事では、いびきに対する舌トレーニングの効果や、改善しないときの対処法を解説します。この記事を読むことで、舌トレーニングの効果を知ることができ、いびきの改善を目指せます。

2009年に群馬大学医学部医学科を卒業以降、関東圏の循環器病院で勤務。現在は、横浜市神奈川区にある「Myクリニック本多内科医院」の院長を務める。担当は内科・循環器内科。いびき、睡眠時無呼吸症候群のプロとして日々臨床に取り組む。累計、300人以上のいびき、睡眠時無呼吸症候群の患者を担当。
一般社団法人 いびき無呼吸改善協会
いびき予防に舌トレーニングは効果あり!その理由とは?
舌トレーニングとは、舌の筋力を維持・向上することで、舌根沈下を起こりにくくしたり、舌の位置異常を矯正できるトレーニングのことです。
いびきの原因が舌である場合、舌トレーニングによっていびきが改善される可能性が高いです。
舌トレーニングによっていびきが改善される理由は主に下記の3つが挙げられます。
舌の筋力を鍛えて気道を広げやすくするため
いびき予防に舌トレーニングが効果ある理由の1つが、舌の筋力を鍛えて気道が広がりやすくなるためです。舌は味覚を感じたり、咀嚼や嚥下、構音に関わっており、後方から前方に向かって突出する筋肉の豊富な組織です。
しかし、何らかの理由で舌の筋力を維持できなくなると、舌は萎縮してしまい、根元のある後方に移動してしまいます。舌後方には気道が位置しており、萎縮した舌が後方の気道を狭窄させるため、いびきをかきやすくなります。
さらに、萎縮した舌は重力の影響を受けやすくなるため、仰向け寝の場合は重力によって後方に移動する力が働き、よりいびきをかきやすくなるため、注意が必要です。
舌トレーニングを行うことで舌の筋力を維持・増加できれば、後方への移動を制限でき、いびきの予防効果が得られやすくなります。
一方で、どんなに筋力を維持しても、筋弛緩作用のある睡眠薬やアルコールの常用など行う方の場合、舌の筋力が弛緩してしまうため、いびきが生じやすくなり、注意が必要です。
口呼吸を減らして鼻呼吸を促すため
舌トレーニングによって口呼吸を減らして鼻呼吸を促すことができる点も、いびき予防に有効な理由の1つです。
舌は本来、口腔内の上の天井部分である口蓋に触れている位置にあることが正常ですが、舌の筋力が低下したり、もともとあまり舌の使い方が上手ではない人の場合、舌の位置が下がってしまいます。(これを低舌位という)
舌の位置が下がると、自然と口も開口しやすくなることで、本来鼻呼吸が主であるにも関わらず口呼吸の割合が増加してしまいます。
口呼吸をすると下顎が後下方に移動し、さらに気道が狭窄しやすくなることで、よりいびきが悪化する原因となるため、注意が必要です。
舌トレーニングを行うことで舌本来の正しい位置に誘導することができ、口呼吸を減らして鼻呼吸が促されることでいびきの改善が期待できます。
また、口呼吸に伴ういびきは口腔内の乾燥を招き、口臭の原因ともなるため、特に「いびき+口臭」で悩んでいる人に有効な可能性が高いです。
呼吸が安定しやすくなるため
舌トレーニングによっていびきが予防されやすくなる理由として、呼吸が安定しやすくなる点が挙げられます。先述したように、舌の位置が呼吸に与える影響はとても大きく、舌の位置が後方や下方に移動することで結果として気道が狭窄しやすくなります。
さらに、気道が狭窄すると、鼻呼吸だけでは1回の呼吸で吸い込める空気や酸素の量が低下するため、代償性に口呼吸の割合が増え、口を大きく開けてより多くの空気や酸素を吸い込もうと呼吸様式が変化しますが、これがまさにいびきの原因です。
先述したように、口呼吸の場合は大きな呼吸をすればするほど、下顎が後下方に移動し、気道を狭窄させるためです。
舌トレーニングを行うことで、舌は正しいポジションを取れるようになり、気道狭窄が解除されることで呼吸が安定するため、いびきをかきにくくなります。
いびき改善のための舌トレーニングの方法
いびきを改善させるために舌トレーニングを実践したい方の中には、実際にどのように舌トレーニングを行えばいいのか分からず、お困りの方も少なくないでしょう。
不適切な方法でトレーニングを行っても思ったような効果は得られないため、ここではいびき改善のための舌トレーニングの適切な方法を3つ紹介します。
なお、これらの対処法は実践して翌日にはいびきが改善するわけではなく、効果が出るまでに数週間〜数ヶ月はかかることは留意しておきましょう。
あいうべ体操
いびき改善のための舌トレーニングとして、あいうべ体操が効果的です。
その名の通り、あいうべ体操は口を「あ~」「い~」「う~」「べ~」の発声の際と同様に動かし、舌や口・顔面の筋肉を鍛える体操です。
- 「あ~」:大きく口を広げて、その状態で1秒間キープする。舌骨筋群や開口筋群に効果的。
- 「い~」:思いっきり口を横に広げて、その状態で1秒間キープする。広顎筋や笑筋、大頬骨筋に効果的。
- 「う~」:唇を前方に思いっきり突き出して、その状態で1秒間キープする。口輪筋に効果的。
- 「べ~」:舌を前方ではなく顎先方向に伸ばし、その状態で1秒間キープする。舌筋に効果的。
どの運動も、短時間で消化しようとせず、大きくゆっくり丁寧に行う必要があります。
また、この運動を10回1セットとして、毎日合計3セット行うことで効果的に筋肉を鍛えることができます。いびきの改善以外にも、脳の活性化や小顔効果も得られるため、年代や性別を問わずおすすめの体操です。
舌を上下左右に大きく動かす運動
いびき改善のための舌トレーニングとして、舌を上下左右に大きく動かす運動も効果的です。
この運動もその名の通り、舌を上下方向と左右方向に動かすことで、舌や口周囲の筋肉を鍛えることができます。
具体的な方法は主に下記の通りです。
- 舌を左右方向に大きくしっかり動かす。(左右の口角限界まで舌を伸ばすイメージで)
- 舌を上下方向に大きくしっかり動かす。(上は鼻先、下は顎先を目指すようなイメージで)
- 最後に舌を時計回り・反時計回りにぐるぐる回す。
この運動も、ポイントは素早く小さく行うのではなく、ゆっくりと大きく動かすことが重要です。
それぞれの運動(1~3ステップ)を5回ずつ繰り返し、それを1セットとして、毎日合計3セット行うことで効果的に筋肉を鍛えることができます。
なお、この運動によっていびきの改善はもちろんのこと、嚥下機能の向上や、舌の唾液腺が程よく刺激されることで口腔内を清潔に保つことができます。
舌を前に突き出す運動
いびき改善のための舌トレーニングとして、舌を前に突き出す運動も効果的です。他の体操と同様、舌を前に突き出すことで舌の筋力増強はもちろん、口周囲や顔面全体の筋肉も刺激することができます。
具体的な方法は主に下記の通りです。
- 「あっかんべー」の時のように、顎先方向に向かって思い切り舌を前方に突出させて、その状態を5秒間キープ。
- 5秒経過したら、ゆっくりと舌を口の中に引き戻し、口の中でもしっかり折りたためるまで舌を引き戻す。
この運動を5〜10回繰り返すのを1セットとして、毎日合計3セット行うことで効果的に筋肉を鍛えることができます。
他の運動と同様、この突き出し運動でも、顔や首が温かくなるほど大胆に舌を動かすことでより高い効果を得ることができます。
繰り返し行うことで舌の筋力強化・誤嚥予防・小顔効果・唾液分泌増進など、さまざまな効果を得ることができるでしょう。
舌トレーニングでいびきが改善しないときの対処法
ここまで紹介したように、舌トレーニングを行うことで舌根沈下の予防や、口呼吸の抑制など、さまざまな効果を得られ、いびきの改善が目指せます。
一方で、いびきの原因によっては舌トレーニングを行っても十分な改善が得られないため、注意が必要です。
ここでは、舌トレーニングでいびきが改善しないときの対処法を3つ紹介します。
生活習慣を改善する
舌トレーニングでいびきが改善しないときの対処法として、生活習慣の改善が挙げられます。生活習慣の乱れはいびきの発症に大きく影響することが知られており、その原因を改善しない限り舌トレーニングを行ってもいびきの改善は得られない可能性が高いです。
具体的に下記のような生活習慣を送っている方は注意が必要です。
- 就寝直前までの暴飲暴食:頸部に脂肪がついて気道が狭窄する
- 過剰な飲酒や喫煙:気道の浮腫や舌根沈下によって気道が狭窄する
- 運動不足:頸部に脂肪がついて気道が狭窄する
- 不適切な寝具の使用:頚部が過度に屈曲して気道が狭窄する
- 睡眠薬の常用:舌根沈下によって気道が狭窄する
上記に当てはまるような生活習慣を送っている方はそれぞれ上記のような理由で気道が狭窄し、結果としていびきが生じやすくなります。
特に肥満はいびきの最大の原因となるため、食生活を整え、運動習慣を身につけることがいびきの予防・改善において重要です。
市販のいびき対策グッズを使う
舌トレーニングでいびきが改善しないときの対処法として、市販のいびき対策グッズの使用が挙げられます。市販のいびき対策グッズを用いることで気道の狭窄が改善され、いびきが改善する可能性があります。
例えば、鼻腔拡張テープやノーズクリップなどの商品は、鼻腔を拡張することで、鼻いびきの改善を目指せるアイテムです。アレルギー性鼻炎・慢性鼻炎・慢性副鼻腔炎・鼻茸などの耳鼻科疾患による鼻いびきを生じている場合は、舌トレーニングよりも有効です。
他にも、口呼吸が多いことでいびきをかいている人の場合、市販の口閉じテープを使用することで自然と口呼吸を減らし、鼻呼吸の割合を増やすことでいびきの改善を目指せます。
また、口呼吸が多いことでいびきをかいている人にはマウスピースもおすすめです。マウスピースを装着すると、口呼吸の際にも下顎が前方に固定され、後方の気道の狭窄を予防することができるため、いびきの改善を目指せます。
これらの市販グッズは、原因によって使用すべきグッズも異なるため、原因を把握してから購入することが重要です。
耳鼻科や睡眠クリニックを受診する
舌トレーニングでいびきが改善しないときの対処法として、耳鼻科や睡眠クリニックの受診も検討しましょう。原因によっては舌トレーニングはおろか、生活習慣の改善や市販グッズの使用でもいびきが改善できない可能性があるためです。
例えば、重症の鼻茸や鼻中隔湾曲症によって生じている鼻いびきの場合、物理的な狭窄が強いため、点鼻薬や市販グッズでは改善は困難であり、レーザー治療や手術療法が必要となります。
また、いびきの原因が睡眠時無呼吸症候群(何らかの原因で気道が狭窄し、睡眠中に低呼吸や無呼吸の頻度が増えることでさまざまな健康被害を及ぼす疾患)の場合、その程度によってはやはり生活習慣の改善や市販グッズでは改善は困難であり、マウスピースの装着やCPAP療法など、専門的な治療が必要となります。
これらの専門的な治療を受ける上では、まずいびきの原因を問診や身体診察、CT検査など駆使して特定する必要があるため、セルフケアでも改善が困難な方は耳鼻科や睡眠クリニックの受診を検討しましょう。
いびきと舌トレーニングに関する体験談と改善事例
- 実際に舌トレーニングでいびきが改善した人はいるの?
- 舌トレーニングで改善しなかった人はどう対処したの?
このような疑問をお持ちの方も少なくないでしょう。
いびきの改善の経過は個人差も大きく、舌トレーニングで改善した事例もあれば、それでは不十分で他の対処法が必要となった例もあります。
ここでは、いびきと舌トレーニングに関する体験談と改善事例を3例紹介します。
20代男性:舌トレーニングの継続だけで改善した事例
20代男性のAさんはこれまで特に大きな病気もなく、健康に過ごしていた会社員です。これまでは一人暮らしでしたが、彼女と同棲し始めてから、彼女に「口を開けて寝ていていびきが目立つ」と指摘され、初めて自身のいびきを自覚したそうです。
確かに、朝起きた時に口の中が乾燥していたり、時折口臭が気になることもあったため、急に恥ずかしくなり、改善を意識し始めました。
ショックを受けたAさんは口いびきの対策をネットで調べたところ、「あいうべ体操」と呼ばれる舌トレーニングを知り、実践し始めたそうです。
実践当初はいびきの改善が得られなかったものの、3ヶ月頃から徐々に効果が出始め、彼女曰く「口呼吸の頻度が減っていびきが小さくなっている」とのことでした。
以降も継続し、半年ほどで睡眠中はずっと鼻呼吸で寝れるようになり、起床時の口渇感や口臭も気にならなくなったそうです。毎日数分だけのトレーニングで本当に症状が改善したため、もっと早くから実践すればよかったと感じたそうです。
40代女性:手術療法で改善した事例
40代女性のBさんは日々会社で働いており、毎日規則正しい生活を心がけていました。過去には大きな病気もなく、健康診断でも特に異常を指摘されたことはありませんでしたが、ここ最近鼻詰まりの悪化を感じていたそうです。
ある日、家族から「最近いびきがうるさくて眠れない」と指摘されたことで、自身がいびきをかいていることを初めて自覚し、ショックを受けたそうです。
そこで、いびき改善のために市販のいびきグッズを使用したり、ネットで調べた舌トレーニングの一環として舌を上下左右に大きく動かす運動を毎日実施し始めました。
しかし、半年ほど継続してもいびきは一向に改善せず、むしろ悪化傾向であったため、近隣の医療機関を受診して精査したところ、鼻中隔湾曲症と診断されました。
その後、鼻詰まりやいびきの原因は鼻中隔湾曲症であるため、改善のためには手術が必要とのことで、手術を行う運びとなったそうです。
術後2週間後には鼻の通気性も著明に改善し、いびきも解消されましたが、セルフケアだけでの改善は困難であったことから、もっと早く医療機関を受診すればよかったと感じたそうです。
60代男性:CPAP療法で改善した事例
60代男性のCさんは、定年後から生活リズムが変化し、外出する機会も極端に減ったことから体重が増加傾向でした。
ここ数ヶ月で体重は10kg以上増加し、それとともに妻からは「いびきを大きくかくようになり、時折呼吸が止まっている」と心配されていたそうです。
起床時から頭痛や倦怠感を認め、日中に激しい眠気に襲われるようになり、妻もいびきの音で睡眠が障害されていたため、気軽に試せる舌トレーニングでの改善を目指しました。
しかし、3ヶ月、半年と経過しても一向にいびきは改善せず、妻からも病院の受診を勧められたため、医療機関を受診したところ、睡眠時無呼吸症候群の診断を受けました。
症状は重症であり、CPAP療法の適応であることから、早期にCPAP療法が始まったそうです。
開始当初は装着感になれず寝苦しかったものの、慣れてくると熟睡できるようになり、いびきもすぐに改善したそうです。
倦怠感や頭痛も改善し、医療機関で自身の症状に合った適切な治療を受けられてよかったと安心できたそうです。
【まとめ】舌トレーニングでいびきが改善しない場合は病院の受診も検討しよう
この記事では、舌トレーニングのいびきの予防効果や、舌トレーニングでいびきが改善しない場合の対処法を詳しく解説しました。舌トレーニングは舌の筋力増強や位置の適正化によって舌根沈下や口呼吸の割合を減少させることで、いびきの改善が期待できるトレーニングです。
一方で、いびきの原因によっては舌トレーニングは有効に働かない可能性もあるため、改善が得られないときは生活習慣の改善や市販グッズを試してみると良いでしょう。
それでも改善が得られないときは医療機関への受診を検討すべきですが、この記事を読まれている方の中には、「いびきなんかで病院を受診していいの?」と疑問をお持ちの方も少なくないでしょう。
そこで、下記の記事では自身のいびきの危険度を簡易的にセルフチェックできる方法を紹介しているため、ぜひリスクを把握するためにもご一読ください。


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