- 変な音のいびきをかいていた
- いびきが変と言われたことがあるけど、どんないびき?
家族やパートナーにこのような指摘を受けたことがある方は注意が必要です。
「グーグー」「ガーガー」といった一般的な音ではないいびきの場合、ただのいびきではなく、呼吸器疾患や心疾患など命に関わる病気が隠れている可能性もあります。
そこでこの記事では、変な音のいびきの特徴やその原因、注意点などについて詳しく解説します。この記事を読むことで、変な音のいびきの原因が把握でき、自身のいびきの危険性やリスクを正しく評価できるようになるため、ぜひご一読ください。

2009年に群馬大学医学部医学科を卒業以降、関東圏の循環器病院で勤務。現在は、Myクリニック本多内科医院の院長を務める。担当は内科・循環器内科。いびき、睡眠時無呼吸症候群のプロとして日々臨床に取り組む。累計、300人以上のいびき、睡眠時無呼吸症候群の患者を担当。
一般社団法人 いびき無呼吸改善協会
どんな「変な音」のいびきがある?【よくある例】
一般的に、いびきの擬音は「グーグー・ガーガー」と表されますが、中には下記のような変な音のいびきをかく方もいます。
上記いずれかに当てはまるような変な音のいびきをかいている場合、一般的ないびきではない可能性があり、何らかの病気を発症している可能性もあるため、注意が必要です。
ここでは、変な音のいびきの特徴や危険度についてそれぞれ詳しく解説します。
ゴーゴー・ガーガーという喉奥の音
「ゴーゴー・ガーガー」という喉奥の音は、一般的ないびきが少し悪化している状態です。
いびきとは、睡眠中の呼吸において空気が気道を通る際に、気道の粘膜が振動することで生じる振動音であり、より気道が狭くなることで音も大きく、うるさくなっていきます。
気道が狭くなる要因として、肥満による首周りの脂肪沈着や、就寝直前の飲酒・喫煙・暴飲暴食、不適切な寝具の使用など、さまざまな要因が挙げられます。
特に要注意なのが肥満であり、首周りに脂肪が沈着することによる気道狭窄はもちろんのこと、肥満の方はより多くの酸素を必要とするため、本来の鼻呼吸ではなく、よりたくさんの酸素を取り入れようと口呼吸が増加していびきをかきやすくなります。
これは、口呼吸によって下顎が後下方に移動することで、その後方に位置する気道がさらに狭くなるためです。「ゴーゴー・ガーガー」という喉奥の音がする場合は、生活習慣や体型を見直してみると良いでしょう。
ピーピー・ゼーゼーという笛のような音
「ピーピー・ゼーゼー」という笛のような音を認める場合、特に下気道が異常をきたしている可能性があるため注意が必要です。
気道は声門より上の咽頭・喉頭・鼻腔などの上気道と、気管・気管支・肺胞などの下気道に分類でき、下気道に何らかの異常が生じると、「ピーピー・ゼーゼー」という笛のような音を認めます。
特に呼気時(空気を吐く時)に変な音が聞こえる場合は、下気道が狭窄している可能性が高く、その原因としては、気管支喘息・慢性気管支炎・COPDなどの呼吸器疾患が挙げられます。
一方で、吸気時(空気を吸う時)に変な音が聞こえる場合は、肺胞に水が溜まっている可能性が高く、その原因としてはうっけつ性心不全などが挙げられるため、注意が必要です。
これらの疾患はどれも呼吸苦を伴い、放置して症状が進行すれば命に関わる危険性もあるため、早期発見・早期治療が肝要です。笛のような変な音のいびきが聞こえる場合は、早急に医療機関を受診すると良いでしょう。
大きな爆発音・突然のガーッという音
睡眠中に、大きな爆発音のようないびきや、突然のガーッというような音のいびきを認める場合、上気道の閉塞を引き起こしている可能性が高いです。
通常、呼気時には肺に溜まった空気が気道を押し広げて通過していくため、気道は開存しやすいですが、吸気時には空気を吸い込むことによって陰圧がかかり、気道も狭くなりやすいため、閉塞しやすくなります。
そのため、吸気時に一時的に完全に気道が狭窄してしまうと、その状態を改善させるために「ガーッ」という大きな音や爆発音のような音を立てて呼吸を再開させます。
吸気時に呼吸が止まるくらい気道が狭窄してしまう背景には、高度肥満や扁桃肥大・アデノイドなどの耳鼻科疾患、さらには飲酒・喫煙などの生活習慣の乱れなどが挙げられ、これによって睡眠時無呼吸症候群を発症している可能性があるため、注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群とは、上記のような要因で睡眠中気道が狭窄し、呼吸が弱まる、もしくは一時的に完全に停止する病気であり、睡眠の質を大きく低下させる病気です。
ガリガリ・キリキリという歯をこする音
「ガリガリ・キリキリ」という歯をこする音が聞こえる場合、歯ぎしりをしている可能性があります。歯ぎしりは睡眠中に無意識に歯を食いしばってしまい、歯を強く擦り合わせたり噛み締めたりする動作です。
不安や緊張などの精神的ストレスや、噛み合わせが悪い場合、もしくは睡眠時無呼吸症候群などの疾患によって睡眠の質が低下している場合などに歯ぎしりが起こりやすいことが知られています。
特に注意すべきは睡眠時無呼吸症候群による歯ぎしりです。睡眠時無呼吸症候群による低酸素のストレスや睡眠の質の低下が原因で、頚部や咽頭部の筋肉が緊張して歯ぎしりを発症しますが、この場合、睡眠時無呼吸症候群に伴ういびきと歯ぎしりの音が両方同時に鳴ってしまうため、評価しにくくなります。
また、歯ぎしりを放置すると歯に大きな負担がかかり、知覚過敏や咬耗症(噛み合わせ面がすり減る状態)に陥る可能性が高まるため、早期発見・早期対策が肝要です。
プー・プシューという音
「プー・プシュー」という音が聞こえる場合、セイルエフェクトか睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
セイルエフェクトとは、睡眠中に軟口蓋が帆のように翻り、鼻腔からの空気が肺に到達できなくなるため、口呼吸が誘発される現象です。
軟口蓋や口蓋垂に何らかの炎症が生じて腫れてしまった場合や、扁桃腺や舌が大きい場合に、鼻呼吸が困難となることで生じます。
鼻呼吸が一時的に停止し、口呼吸で呼吸を再開した際に漏れ出る空気の音が「プー・プシュー」と聞こえます。
また、「プーッ」と高い音が出た場合、上気道が狭窄している可能性があり、注意が必要です。より気道が狭くなるほど、そこを通過する空気の振動音は高くなるため、高音の「プーッ」という音が聞こえた場合は、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする上気道閉塞の可能性が高いです。
カッカッという音
「カッカッ」という音が聞こえる場合、睡眠時無呼吸症候群の症状が進行している可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群によって上気道狭窄が進行すると、吸気時に気道を通過できる空気が限られ、通過できる時と通過できない時を交互に繰り返すことで、音が断続的に「カッカッ」と聞こえます。
また、一定時間呼吸が止まると「ガガッ」という大きな音とともに呼吸が再開する点も特徴的です。この音が聞こえるということは、それだけ気道が狭い証拠であり、睡眠中に十分な量の酸素を体に取り込めていない可能性があります。
持続的な酸素不足は心身ともに十分疲労を癒すことができず、睡眠の質の低下や日中の眠気、倦怠感などにつながるため、注意が必要です。
症状が悪化すれば強い眠気によって仕事や学業などの日常生活に支障が出るだけなく、交通事故や転倒・転落などで命の危険性もあるため、早期に医療機関に受診すべきです。
変な音のいびきの原因とは?
「変ないびきの原因は?」「もしかして変な音のいびきは何かの病気のせい?」このような疑問をお持ちの方も少なくないでしょう。
「いびき=睡眠中に空気が気道を通過する際の振動音」であるため、通常のいびきと異なる音のいびきを認める場合、気道の解剖や構造に何らかの変化をきたしている可能性が高いです。
具体的に、変な音のいびきの原因は大きく分けて主に下記の3つです。
それぞれについて詳しく解説します。
上気道の閉塞
変な音のいびきの原因として、上気道の閉塞が挙げられます。上気道が閉塞することで、特に気道に陰圧のかかる吸気時には空気が通る際の振動音が変化しやすく、普段とは異なる音色を奏でる可能性が高まるためです。
上気道閉塞の原因としては下記のような要因・病気が挙げられます。
- 肥満
- 乱れた生活習慣(飲酒や喫煙・暴飲暴食)
- 疲労やストレス
- 不適切な寝具の使用
- 解剖学的要因(舌が大きい・顎が小さいなど)
- 耳鼻咽頭科疾患(副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎・アデノイド・扁桃肥大・鼻茸など)
- 睡眠時無呼吸症候群
上記のような原因で上気道が閉塞する場合、特に吸気時に変な音のいびきをかきやすいです。
また、セルフケアで十分改善可能な原因もあれば、医療機関で適切な治療を受けないと症状の改善が見込めないような原因もあるため、まずは原因解明や適切な対処のためにも医療機関への受診が重要です。
下気道の狭窄
変な音のいびきの原因として、下気道の狭窄が挙げられます。
声門より末梢にある気管や気管支が何らかの原因で狭窄した場合、そこを通過する空気の振動音が変化して普段と異なる変な音のいびきが聞こえる可能性があります。
気管や気管支は周囲を軟骨で覆われ形状を保っているため、通常は吸気時の陰圧でも虚脱して気道が狭くなることがありません。
しかし、何らかの原因で気管や気管支の一部が狭くなると、特に呼気時に肺からの空気が狭い気道によって乱流を生み、そこで生じる振動音によって変な音のいびきが生じます。
下気道の狭窄の原因は主に下記のとおりです。
- 気管支喘息
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 急性細気管支炎
- 気道異物
- 気管内腫瘍
上記のような疾患の場合、いびき以外にも日常的に息苦しさや呼吸困難感を認めるため、いびきを指摘される以前になんらかの症状を自覚できている可能性が高いです。
どの疾患も呼吸器科での専門的な治療が必要となる疾患であるため、疑わしい場合は必ず医療機関を受診しましょう。
肺胞における異常
変な音のいびきの原因として、肺胞における異常が挙げられます。
肺胞とは、気管、気管支に続いて吸い込んだ空気が最終的に到達する部位であり、肺胞で空気中に含まれる酸素を血管に引き渡し、逆に体内に蓄積した二酸化炭素を血管から空気中に排出します。
しかし、うっけつ性心不全などを発症すると肺胞内に水が溜まり、吸気時に肺胞に流入した空気と水がぶつかり合うことで、変な音のいびきが鳴るわけです。
立位や座位と比較して、横になると全身の水分が心臓により多く戻るため、うっけつ性心不全の症状が増悪します。
そのため、睡眠中は特にうっけつ性心不全に伴う変な呼吸音が出やすくなるため、注意が必要です。
なお、ここまで悪化したうっけつ性心不全は早急に医療機関を受診し、入院して加療する必要があるため、横になった時に症状が悪化する場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
睡眠中に変ないびきの音が出ていて呼吸が止まる場合は要注意
睡眠中に変ないびきの音が出ていて呼吸が止まる場合は要注意です。
この場合、先述した睡眠時無呼吸症候群がかなり進行している可能性が高く、睡眠中に取り込める酸素量が低下しているため、身体は持続的な低酸素状態に陥っています。
呼吸が止まると苦しくて起きてしまい、中途覚醒が増加することで睡眠の質が低下することが知られています。そのため、睡眠時間を確保しても十分に脳が休息することができず、日中の激しい眠気の原因となり、日常生活に大きな支障をきたします。
さらに、持続的な低酸素によるストレスによって交感神経が活性化してしまい、長期的には高血圧や糖尿病、心房細動、脳血管障害などの疾患の発症リスクを増大させることも知られており、注意が必要です。
これらの疾患は命の危険性もある疾患であるため、もし睡眠中に変ないびきの音が出ていて呼吸が止まっている場合は、早急に医療機関を受診しましょう。
【まとめ】変ないびきの音が続く場合は早めの対処を
今回の記事では、変な音のいびきについてそれぞれの特徴や原因、さらには考えられる病態について詳しく解説しました。
通常のいびきと異なる音の場合、より重症度の高い疾患で言うと気管支炎や気管支喘息などの呼吸器疾患や、うっけつ性心不全などの循環器疾患を発症している可能性があるため、注意が必要です。
また、睡眠時無呼吸症候群を発症している可能性もあり、その場合長期間放置すると脳卒中など、重篤な疾患の発症リスクが増大してしまうため、やはり早期対策すべきです。
一方で、たかがいびきと考え、そこまで危険度を実感できていない方も少なくないでしょう。
そこで、自身のいびきがどれくらい危険度が高いかをセルフチェックできる内容を下記の記事ではまとめているため、ぜひ下記の記事も参考に、自身のいびきの危険度をまずはチェックしましょう。

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