「意識を失ういびきをかく」場合の原因・対処法を現役医師が解説

  • 意識を失ういびきをかくことがある
  • 家族が意識を失っていびきをかいているけど、何かの病気?

このようなお悩みやご不安を抱えている方は、注意が必要です。

意識を失ういびきをかく場合、深い睡眠に伴ういびきの可能性もありますが、場合によっては脳卒中などの危険な病気を発症している可能性があります。

対処が遅れれば命の危険性もあり、早期から適切な対処が求められるため、この記事では、意識を失ういびきをかく場合の原因や対処法を解説します。

この記事を読むことで、意識を失ういびきの危険性や原因を把握でき、早期から適切に対処できるようになるため、ぜひご一読ください。

この記事の監修者
dr-honda

本多 洋介 医師

2009年に群馬大学医学部医学科を卒業以降、関東圏の循環器病院で勤務。現在は、Myクリニック本多内科医院の院長を務める。担当は内科・循環器内科。いびき、睡眠時無呼吸症候群のプロとして日々臨床に取り組む。累計、300人以上のいびき、睡眠時無呼吸症候群の患者を担当。

一般社団法人 いびき無呼吸改善協会

目次

「意識を失ういびきをかく」とはどういう状態?

意識を失ういびきをかく状態とは具体的に下記のような状態を指します。

  • 声をかけたりゆすっても起きない
  • 反応があっても意識状態が清明でなく、いびきをかく
  • 前触れなく突如としていびきをかき始める
  • 寝ているわけではなく、倒れる形でいびきをかいている
  • 大きい呼吸と小さい呼吸を定期的に繰り返すようにいびきをかく

下記のようないびきを認める場合、意識を失っていびきをかいている可能性が高く、なんらかの病気を発症している可能性もあるため、注意が必要です。

ただの寝落ちと何が違うのか

突如意識を失いいびきをかく場合、特に病気を疑っていない限りは寝落ちしただけと考えてしまう方もいるでしょう。
しかし、ただの寝落ちと意識を失ういびきをかく状態とでは、その意識レベルと原因が異なります。

まず、意識状態は医療現場では「JCS」と呼ばれるスケールで評価され、意識の清明度や刺激に対する反応で0〜300までの数字で表されます。(参考文献:厚生労働省

通常、ただ寝落ちした状態であれば、呼びかけや強い痛み刺激によって即座に覚醒し、JCSは0(意識清明)の状態に戻るはずです。

しかし、意識を失っていびきをかいている状態の場合、呼びかけや痛み刺激に対する反応が鈍く、JCSの数値が高い状態でいびきをかきます。

また、原因においてもただの寝落ちの場合は単なる睡眠ですが、意識を失いいびきをかく場合はなんらかの病気を発症して意識状態が悪化している可能性があるため、注意が必要です。

実際にあった「目覚めないいびき」のエピソード

ここでは、実際にあった「目覚めないいびき」のエピソードを3つ紹介します

それぞれの事例で特徴や原因も異なるため、ぜ目覚めないいびきを認める場合はぜひ参考にしてください。

30代男性の事例

30代男性のAさんは日頃から仕事が多忙のあまり、普段から不規則な生活習慣を繰り返していました。仕事が夜遅くなることも多く、食生活も乱れて深夜に大食いしてしまうことも少なくありませんでした。また、夜遅くまで飲酒したり、寝付きの悪い夜は睡眠薬を摂取して無理やり寝るような日もあったそうです。

そのような生活習慣が続いていたところ、家族から「就寝直後から大きないびきをかき、うるさいから起こそうとしても起きない」と、普通のいびきとは異なる指摘を受けたことをきっかけに自覚しました。

本人は飲酒や睡眠薬によって半ば強制的に睡眠をとっており、いびきの自覚もなく、家族からの指摘に驚いたそうですが、確かにそのような生活習慣になってから睡眠の質の低下を自覚しており、朝起きた時の倦怠感や日中の眠気に困っていたそうです。

そこで、念のため医療機関を受診したところ、食生活の乱れや就寝直前の飲酒、睡眠薬の摂取など、どれも舌根沈下を起こしやすくする原因であり、そのせいで気道が狭くなっていびきをかいていると指摘されました。

その後、できるだけ食生活を整え、就寝前の飲酒や睡眠薬に頼ることを控えた結果、いびきが改善され、朝の倦怠感や日中の眠気も解消されたそうです。

60代男性の事例

60代男性のBさんは特に生活習慣に変化があったわけではありませんが、加齢とともに徐々に体重が増加し、60代に入ってからは肥満度を示す指数、BMI(体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))が30を超えたそうです。その頃から、徐々にいびきの音がうるさくなり、突然「ガガッ」と大きな音を鳴らすようないびきをかくようになったそうです。

家族がいびきを止めようと起こそうとしても起きませんが、「ガガッ」と大きな音を立てた後に一瞬目覚めるようなことはあったそうです。

本人はこの頃から日中の激しい眠気や朝の倦怠感を自覚しており、強烈な日中の眠気によって仕事が手につかない日も少なくないような状況でした。

そこで、医療機関を受診したところ、睡眠時無呼吸症候群の可能性を指摘され、実際に専門的な検査を実施したところ、AHI(1時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計回数)が30回以上であり、重度の睡眠時無呼吸症候群と診断されました。

睡眠時無呼吸症候群は、気道狭窄に伴って睡眠中に取り込める酸素量が低下し、睡眠の質の低下や日中の過度な眠気など、さまざまな症状をきたす疾患です。その後、Bさんは医師の指示通り減量療法とCPAPの装着によっていびきが改善し、日中の眠気も改善を認めました。

70代男性の事例

70代男性のCさんは、これまで高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を指摘されていましたが、特に医療機関を受診することなく放置していました。

ある時、家族と食事中に突然、事切れたかのように意識を失い、いびきをかき始めたそうです。突然のことに家族は戸惑い、声をかけたり身体を揺さぶっても反応が得られなかったため、異変を察知して救急車を呼び、医療機関に緊急搬送されました。

医療機関では緊急で頭部MRIが実施され、結果として広範の脳梗塞を認めました。その後、点滴療法や抗血小板薬の投与など、内科的治療が実施されて徐々に意識レベルは改善しましたが、本人は発症当時のことを何も覚えていなかったそうです。脳梗塞改善後はいびきも消失し、原因として考えられる高血圧や糖尿病、高脂血症に対して内服療法が実施されました。

意識を失ういびきをかく場合に考えられる5つの原因

意識を失ういびきをかく場合に考えられる5つの原因は下記の通りです。

いずれの原因であっても、舌根が沈下することで気道が狭窄し、いびきをかいてしまいます。
それぞれの原因の特徴について詳しく解説します。

睡眠時無呼吸症候群の可能性

意識を失ういびきをかく場合、睡眠時無呼吸症候群を発症している可能性があります。

先述した通り、睡眠時無呼吸症候群とは何らかの原因で気道が狭窄し、睡眠中に取り込める酸素の量が低下することで睡眠の質が低下したり、日中に過度な眠気に襲われる病気です。

主な原因は肥満であり、頸部に脂肪が沈着することで気道が圧排されて狭窄してしまいます。また他にも、顎が小さい、舌が大きいなどの解剖学的要因や、飲酒・喫煙などによる気道浮腫など、さまざまな要因で発症しうる病気です。

たかがいびきと考えて放置してしまうと、長期的にさまざまな健康被害を及ぼす可能性もある病気のため、疑わしい場合は生活習慣の改善とともに、早期に医療機関を受診すべきです。

過度な疲労やストレスが引き起こすケース

意識を失ういびきをかく場合、過度な疲労やストレスが原因となるケースもあります。過度な疲労やストレスを抱える場合、心身を回復させるために普段よりも睡眠が深くなり、呼びかけに反応しにくくなります。

さらに、より深い睡眠によって全身の筋肉が弛緩するため、気道周囲を形成する咽頭・喉頭の筋肉が弛緩し、その結果、気道が圧排されやすくなるため、いびきをかきやすくなるのです。

またそれ以外にも、過度な疲労やストレスから回復しようと大量の酸素を吸おうとするため、鼻呼吸ではなく口呼吸の頻度が増加します。

口呼吸は下顎が後下方に移動するため、その後方に位置する気道がより狭窄しやすくなり、やはりいびきをかきやすくなる原因です。

アルコールや薬の影響で深く眠りすぎる状態

意識を失ういびきをかく場合、アルコールや薬の影響で深く眠りすぎている状態の可能性があります。

寝つきの悪い人の中には、飲酒や睡眠導入剤の内服によって眠ろうとする方もいますが、実はいびきを悪化させ、睡眠の質を低下させることが知られているため、注意が必要です。

アルコールには筋弛緩作用があるため、睡眠中の舌の筋肉も弛緩させてしまい、普段よりも気道狭窄を引き起こしやすくなります。

また、睡眠薬も同様に筋弛緩作用を持つため、やはり気道狭窄を招きやすくなり、いびきの原因です。飲酒以外にも、喫煙もタバコに含まれる有害物質によって気道に炎症がひき起こり、気道浮腫によっていびきをかきやすくなります。

アルコールや薬には催眠作用もあるため、一時的に意識を失っているかのような深い睡眠に入るものの、いびきによって睡眠の質が低下する可能性があるため、過剰な摂取には注意すべきです。

脳や神経の異常によるいびき

意識を失ういびきをかく場合、脳や神経の異常によっていびきをかいている可能性があります。

気道を構成するすべての筋肉や、気道を狭窄させる原因となる舌は、どれも神経によってその動きを支配されており、神経の機能によって収縮したり弛緩することで呼吸や発話、嚥下が可能となっています。

しかし、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血、脳腫瘍、脳膿瘍などの脳疾患や、外傷や感染症などに伴う末梢神経障害によってこれらの筋肉がうまく機能しなくなると、いびきをかきやすくなるため、注意が必要です。

特に、脳の疾患に伴ういびきの場合、意識障害を伴うため、深い眠りと区別がつきにくく、単なる睡眠に伴ういびきと誤認してしまう可能性が高まるため、注意が必要です。

肥満や体質による気道の閉塞

意識を失ういびきをかく場合、肥満や体質による気道の閉塞が起きている可能性があります。

肥満によって脂肪が頚部に沈着すると、脂肪によって気道が外から圧迫され、気道狭窄に伴ういびきの原因となります。

特に、BMI25以上の肥満を認める方はいびきのリスクが高く、BMIの増加に比例していびきの程度も悪化していく傾向にあるため、BMIを計算して25以上の方は要注意です。

また、もともと生まれつき顎が小さい場合や舌が大きい場合、相対的に気道が圧迫されやすく、いびきの原因となります。特に、日本人は骨格的にも顔が平たく、奥行きが少ない骨格であるため、欧米人と比較して気道が狭窄しやすく、いびきをかきやすいです。

意識を失ういびきをかく場合の3つの対処法

意識を失ういびきをかく場合の対処法を3つ紹介します。

それぞれについて詳しく解説します。

今すぐできる生活習慣の見直し

意識を失ういびきをかく場合、まずは今すぐできる生活習慣の見直しを行いましょう。

生活習慣は睡眠の深度や気道の広がりに深く影響するため、誤った生活習慣を送っていると意識を失ういびきをかく原因となります。過剰なストレスの蓄積、就寝直前の飲酒・喫煙・暴飲暴食、睡眠薬の常用、肥満などは避けるべきです。

また、仰向けでの睡眠はより気道が狭窄しやすくいびきの原因となるため、睡眠中の体位を変えてみるのも1つの手段です。

さらに、寝室の湿度が乾燥していると気道に炎症が生じて気道狭窄の原因となるため、湿度も適切に保つとより良いでしょう。これらの生活習慣の見直しは意識すればすぐに改善できるため、ぜひこれを機に自身の生活習慣を見直しましょう。

病院での検査・治療方法

意識を失ういびきをかく場合、病院での専門的な検査・治療も必要となる可能性があります。

先述したように、意識を失ういびきをかく場合には生活習慣の見直しで改善できるものもあれば、中には脳神経疾患によるいびきや睡眠時無呼吸症候群、耳鼻科疾患などを発症している可能性もあり、その診断によって治療法も異なるため、早期に適切な診断が必要です。

特に、脳梗塞や脳出血などを発症して意識を失いいびきをかいている場合は、医療機関で緊急の治療が必要となります。

治療開始までの時間によって予後が左右される可能性もあるため、意識を失ういびきを認めた場合は極力早期に病院を受診するべきです。

睡眠外来・呼吸器内科の活用法

意識を失ういびきをかく場合、睡眠外来や呼吸器内科を受診してより専門的な検査・治療を実施するのも1つの手段です。

睡眠外来や呼吸器内科では、いびきの原因として代表的な睡眠時無呼吸症候群に対して専門的な検査・診断・治療を実施しています。

特に睡眠時無呼吸症候群の場合は、診断のためにPSG(ポリソムノグラフィー)と呼ばれる検査を受ける必要があります。

この検査は、一晩入院して脳波・眼電図・顎筋電図・心電図・気流・呼吸努力・酸素飽和度などを一晩中モニタリングし、無呼吸低呼吸指数AHI(Apnea Hypopnea Index)を正確に測定する検査です。AHIとは1時間あたりの低呼吸・無呼吸の合計回数であり、この値によって睡眠時無呼吸症候群の診断と重症度分類がなされます。

その重症度や原因に応じて、CPAP療法、減量療法、体位療法、外科的手術など、治療法も異なるため、専門的な検査・治療が可能な睡眠外来や呼吸器内科の活用もおすすめです。

意識を失ういびきをかくのは危険?放置していいの?

「意識を失ういびきをかくのは危険?」「意識を失ういびきを放置してもいいの?」
このようなお悩みを抱えている方も少なくないでしょう。
特に、意識を失ういびきに対して適切に判断する上では下記の2つの内容を理解しておくことが重要です。

それぞれについて詳しく解説します。

命に関わるリスクもある「低酸素状態」とは

意識を失ういびきをかいている場合、命に関わるリスクもある「低酸素状態」に陥っている可能性があり危険です。

意識を失ういびきを認める場合、それだけ取り込める酸素量が低下しており、身体や脳にとって必要な酸素を十分得られていない可能性があります。

この低酸素状態が長期化すると、身体にとってはストレスであり、交感神経系が過剰に興奮してしまうため、血圧や脈拍・血糖などを上昇させる原因となります。

実際に、意識を失ういびきの原因となる睡眠時無呼吸症候群は、長期的に高血圧・糖尿病・不整脈・心不全・脂質異常症・冠動脈疾患・脳卒中の発症率が増加することが知られており、注意が必要です。(参考文献:J-STAGE

以上の理由からも、意識を失ういびきをかいている場合は放置していい状況ではなく、早期から適切な対応が求められます。

こんな症状があればすぐに受診を

意識を失ういびきをかく場合、下記のような症状を認める場合は早期に医療機関を受診すべきです。

  • 健診で血圧や血糖値の上昇を指摘されるようになった
  • 時々胸の痛みや胸部不快感、心拍の不整を感じる
  • 日中に激しい眠気に襲われ、生活に支障をきたしている
  • 麻痺やしびれなどの神経症状を認める
  • 頭痛や嘔気を強く感じる
  • 呂律が回らず、うまく飲み込めない(構音障害や嚥下障害)

上記のような症状を認める場合、意識を失ういびきによって低酸素状態に陥り、身体にとって大きな負担となっているか、現在進行形で脳血管障害を発症している可能性があります。

特に、麻痺やしびれ、構音障害や嚥下障害などの神経症状を認めている場合は意識を失ういびきの原因が脳血管障害である可能性が大変高く、緊急で医療機関に受診すべきです。

【まとめ】意識を失ういびきをかく場合は早期の改善を

今回の記事では、意識を失ういびきの原因や対処法、実際の事例について詳しく解説しました。

意識を失ういびきの予防・改善のためには年代問わず、生活習慣の見直し・改善が有効であり、それによって睡眠の質の改善や、意識を失ういびきの原因となる睡眠時無呼吸症候群や脳卒中の発症そのものを予防することもできます。

また、通常のいびきとは異なり、意識を失ういびきの原因には睡眠時無呼吸症候群や脳卒中など、命に関わる危険性のある病気が隠れている可能性があるため、緊急で医療機関を受診すべきです。

たかがいびきと考えずに、適切に対応できるようになるためには、自身のいびきがどれくらい危険かを事前に把握しておくことが重要です。

下記の記事では、自身のいびきの危険度をセルフチェックできる内容が解説されているため、ぜひ下記の記事を参考に、いびきの危険度をセルフチェックして、適切に対応できるようにしましょう。

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